自費診療クリニック開業のすすめ　成功する開業物件の選び方

自費診療クリニックの特徴

保険診療には、特定の病状に対して一定の治療方法が決まっているため、診療の自由度が制限されています。一方で、自費診療はその制限がなく、医療従事者が患者の状態や要望に応じた最適な治療を提案できる点が魅力です。例えば、通常の保険診療では実施されない精密な検査や、患者個別のニーズに応じた施術が可能です。

しかし、治療費は公的保険の補助がないため、全額自己負担となります。そのため費用は高額になる場合が多いですが、患者にとってはその金額以上のメリットが得られることも少なくありません。特に美容目的の施術（シミ除去、脱毛、整形手術など）は自費診療の典型的な例で、美容クリニックではこの形式が一般的です。

自費診療クリニックの具体例

自費診療クリニックの診療科目は多岐にわたり、以下のようなものが挙げられます

自費診療のニーズ

クリニックを開業する際、保険診療だけでなく自費診療を併用することで、幅広い患者ニーズに応えられるドクターが増えています。たとえば、形成外科と美容皮膚科を兼務するクリニックでは、フェイシャルケアや巻き爪矯正、イボ取り、脱毛症治療などを自費診療で提供するケースが一般的です。

これらの施術では、海外の先端技術を用いることも多く、「もっと美しくなりたい」「体をしっかりケアしたい」といった患者の高い期待に応えるため、自費診療を選ぶ方が少なくありません。こうしたニーズを捉えた診療の提供が、クリニックの成功につながるのです。

エリア選定で考慮すべきポイント

ターゲット患者層とのマッチング

自費診療クリニックでは、診療科目や施術内容に合ったエリアを選ぶことが重要です。例えば、美容皮膚科やアンチエイジングを扱う場合、銀座や表参道のような美容意識の高い層が集まる地域が適しています。一方、男性の薄毛治療クリニックなら、新橋のように働き盛りの男性が多いエリアが候補になります。

交通アクセスと利便性

自費診療は患者が「選んで通う」医療形態です。そのため、駅からの近さや駐車場の有無など、患者にとってアクセスが良い場所を選ぶことで来院のハードルを下げられます。特に新宿や渋谷といった交通の便が良いエリアは、賃料が高くても患者数が期待できるため人気です。

賃料とのバランス

賃料が高額すぎると、固定費の負担が経営を圧迫するリスクがあります。一方、賃料を優先してエリアを妥協すると、患者が集まらず結果的に収益が減少する恐れがあります。クリニックの規模や診療内容に応じて、適切なバランスを見極めることが重要です。

賃料を重視しすぎるリスク

クリニックの初期開業では、広さや賃料のバランスを優先しすぎて集患力の低いエリアを選んでしまうケースがあります。広さを優先することで、結果的に患者数が期待できない地域を選んでしまうと、経営に大きな負担を強いられることになります。そのため、単に家賃が安い場所を選ぶのではなく、エリア特性と患者動線を十分に考慮することが成功への鍵です。

契約形態・契約期間

物件選びでは、契約形態と契約期間を最初に確認することが重要です。契約条件は、クリニックの運営計画や初期投資の回収に大きな影響を与えます。特に「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いについては、開業前にしっかり理解しておく必要があります。

普通借家契約

契約期間終了後も更新が可能なため、長期的な運営を計画している場合に適しています。更新料が発生することが多いものの、契約の安定性が高く、経営計画を立てやすいのが特徴です。

定期借家契約

契約期間が明確に定められ、原則として契約満了後の再契約は約束されていません。そのため、契約終了時点で移転を余儀なくされる可能性があります。特に、内装工事や医療設備の導入など初期投資が大きい自費診療クリニックでは、投資回収が契約期間内に見込めるかを慎重に検討する必要があります。

契約形態は、申込時のビルオーナーとの交渉により変更してもらえたり、期間を変更してもらえたりするケースもあります。仲介業者とよく相談することが大切です。

視認性

自費診療クリニックでは、新患の集患力が経営の基盤となるため、視認性とアクセスの良さは非常に重要です。ビルの1階や主要道路に面した物件は、患者の目に留まりやすく集患力を高めます。また、駅から徒歩圏内や駐車場の有無も来院しやすさを左右します。なお、美容系のクリニックの場合、過剰な視認性を避けるケースもあります。

正面エントランスの開閉時間

診療時間に応じて、物件のルールや運営条件も確認が必要です。例えば、ビルのエントランスの開閉時間や共有スペースの使用制限が診療運営に影響する場合があります。契約前に運営方針との整合性を確認することが大切です。

設備と内装の適応性

クリニック開業時における物件選びでは、医療用設備の導入や内装工事の自由度が非常に重要なポイントです。物件の構造や状態により、対応できる診療内容や初期投資額が大きく変わるため、慎重な検討が必要です。

事務所仕様とスケルトンの違い

事務所仕様の物件は、既存の壁や天井、床などが整備されているため、比較的少ない工事で使用可能な場合があります。一方で、自由なレイアウトが必要な場合や特定の医療用設備を設置する場合、スケルトン（内装が全くない状態）の物件のほうが適していることもあります。

既存設備の活用（居抜き物件）

既に医療用の配管や電力容量が整備されている物件は、初期コストの削減につながります。また、空調や給排水設備が再利用可能かを確認することで、無駄な工事を避けられる可能性があります。

内見時には、医療設備や内装工事に詳しい業者と同行することをお勧めします。貸室の形状から電気容量や配管の配置まで、専門家の視点で物件の状態や施工の難易度を確認することで、予期せぬ追加コストや後からのトラブルを防ぐことができます。アットクリニックでは、ご要望に応じて内見時に専門業者を同行させたり、別途現地調査をセッティングしたりも可能です。

テナント構成

同じビルや周辺のテナント構成も重要です。美容サロンやフィットネスジムなど、美容や健康に関連するテナントが近くにある場合は、相乗効果が期待できます。一方で、同業のクリニックが隣接している場合には、競合対策をしっかりと考える必要があります。