PHASE01
医師のための開業手引書
- 独立計画から運営までの包括的アプローチ -

クリニックや医院を開業するにあたって、やらなければならないことはたくさんあります。経営を軌道に乗せるためには、一つひとつの工程を慌てず着実にこなすことが必要です。

そこで、今回は、クリニックの開業支援となるような内容をまとめました。まず、開業する上で欠かせないマインドセットの方法をはじめ、開業に向けたスケジューリング、コストを大幅カットするクリニック・医院の継承について深掘りしました。

マインドセット
成功する医院のための経営理念と診療方針の作成

まず、「自分自身がなぜ独立開業をするのか」という原点を明確化することを目指します。勤務医と開業医の特徴を記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。そこで見つけた答えが、開業に向けた原動力となるでしょう。

次に、現在の開業医が置かれている状況についてお伝えします。開業の仕方について考える上で、欠かせない知識です。

最後に、それらを踏まえて医院の在り方を考えます。「やりたいこと」「やりたくないこと」がはっきりすれば、医院の経営方針や医師としての働き方が定まってきます。

開業に向けて、まずはマインドセットするためぜひ一緒に確認していきましょう。

  • 医院開業の原動力:「なぜ独立開業するのか」を探る

    独立開業する前には、明確な目的が必要です。「開業医でしか得られないものがある」「開業医の方が、自分の持つ良さを発揮できる」など、勤務医と開業医の特徴を踏まえて考えることも、目的を明確化する1つの方法です。

    そこで、勤務医と開業医のそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。

    メリット デメリット
    勤務医 ・給料や保険、年金が保証されている
    ・個人で責任を負う機会が少ない
    ・さまざまな分野の医者と関わる機会が多い
    ・専門医資格の取得に有利である
    ・病院の方針の元で働かなくてはならない
    ・オンコールや当直など体制によって長時間労働になることもある
    ・開業医と比較して収入が少ないことが多い
    ・大都市圏では買い手市場なため特に賃金が低めの傾向にある
    開業医 ・勤務医より収入が多め
    ・独自の裁量が与えられている
    ・勤務時間をコントロールしやすい
    ・人間関係によるストレスが少ない
    ・地域密着型の仕事ができる
    ・収入の安定性にかける
    ・人事や経理、広告宣伝など、経営者の役目も担わなければない

    まず、開業医のメリットについて、収入面では平均年収で比べると開業医は勤務医の1.6~1.8倍程度です。あくまでもこれは平均値なので、それ以上に稼ぐ医師ももちろんいます。
    (参考:第23回医療経済実態調査 報告 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/23_houkoku.html)

    また、開業医なら独自の裁量で働き方を変えられます。診療科目を始め、働き方や勤務時間もコントロールしやすいです。クリニックの規模や場所も、自分で選べます。例えば「地域密着型の病院が良い」と考えた場合、立地から経営方針までそれに沿って決められます。

    さらに、開業医は職場で気の合わない上司と付き合わなくても済むため、人間関係のストレスが少なくて済みます。ただし、開業医も看護師や事務員などとの連携が必要であり、人間関係の問題がゼロになるわけではありません。しかし、経営者として性格や考え方が合うかどうかを事前に見極めて採用できるため、ある程度のリスクを回避できるでしょう。

    次に、開業医のデメリットには、固定の給料をもらえるわけではないため、収入は安定しづらいということがあります。収入が多い状態で安定すれば良いですが、評判によって患者の数が減ってしまい思った収入が得られないことや、自分が休むと代打の先生を見つけなければ収入が得られないという点がデメリットの1つです。

    また、勤務医は医師としての役目を果たせば良いことが多いですが、開業医は経営者としてやらなければならない仕事もあります。医療だけをすれば良いわけではないという点も、開業医ならではの特徴です。

  • 日本の医療問題:クリニック・医院の後継者不足

    少子高齢化や人口減少に伴う人手不足は、医療業界でも問題視されています。変化の多い時代に生きる若者の意識変化も相まって後継者不足が起こり、廃業せざるを得ないクリニックは多いです。

    令和3年の令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の医療施設調査の結果によると、一般診療の廃止件数が7,612件・休止件数が483件、歯科診療の廃止件数が1,252件・休止件数が145件となっています。

    帝国データバンクの特別企画:医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)では、高齢化を理由に休廃業・解散するクリニックが増加傾向にあり、今後も増加することが示唆されています。

    ちなみに、令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況によると、経営者の高齢化が進んでいることが分かります。クリニックの医師のうち60〜69歳が31,835名、29.7%と最も高い割合を占めている上に、60代以上が占める割合は年々高まっています。

    また、同調査によれば、医師数は年々増加傾向にあります。少子化や診療報酬の減額傾向にある中、医師数は増加しており、クリニックの置かれている状況は厳しくなっているのです。

    ちなみに、このような流れから、開業医を希望する医師の中には、第三者として既存のクリニックを引き継いで開業する人も増えています。

  • 医院開業の戦略:「やりたいこと」と「やらないこと」の統合

    開業医として経営を軌道に乗せ、長く働き続けるためには、やりたいこととやらないことを考えておくことが大切です。
    得意分野を踏まえたり、競合にないものを模索したりして、自分のクリニックの強みを踏まえた上で経営方針や医療サービスを検討します。それらは、スタッフ自身が働く意義を見出すことにつながり、士気を高めることにも役立ちます。

    一方、自分やスタッフのプライベートに配慮することも大切です。家族の時間を持てるように土日祝日はお休みにしたり、夕方遅くまでは診療しないようにしたりなど、勤務時間を決められます。

    ただし、地域に必要とされるクリニックでなければ、そもそも経営が成り立ちません。外出が難しい高齢者が多い地域であれば、訪問診療を取り入れる必要があるかもしれません。自分のやりたい医療とは異なることも、経営者として受け入れなければならない場合もあります。

    開業地で医師としての役目を全うできる経営の在り方や、自分の望む生き方、スタッフの生活など、経営者として幅広い目線で方針を検討することが、経営を軌道に乗せる秘訣です。

医院開業への道筋
有効なスケジューリング

医療開業を成功させるためには、準備にかかる時間から逆算して早めに動き始めることが大切です。

ここでは、「物件探し」「開業日の決定」「資金計画とスケジュール」の3つのトピックについて説明します。それぞれの準備内容や開始するタイミング、押さえるべきポイントなどを詳しくお伝えします。

クリニックといっても、診療科目や地域、クリニックの規模などによって目指す姿は異なります。共通する点と、しっかり吟味が必要な部分の両方について記載したので、理想の医院を開業するためにチェックしましょう。

  • 物件探しと時間:物件確定からかかる時間は?

    診療地域の調査は開業希望日の約1年前から始めるのが良いです。物件探しは遅くとも半年前には始めましょう。地域や物件は、経営に大きく影響する要素なので、余裕を持って準備することが大切です。

    物件選定の際には、クリニック仲介に長けた不動産会社に依頼することが一番の選択肢です。借りる不動産の形態に応じて、借り方や注意事項が異なるので、素人では判断しづらい場合も多いです。そして、オフィスビルの場合は用途や内装に伴う遵法性(建築基準法・消防法)の確認、保健所との事前打合せが必要です。煩雑な事務作業も多く、初めての開業での物件選定には、多くの時間を取られます。

    また、開業の場合は個人契約が一般的です。初期費用としてまとまった金額が必要なので、融資状況が影響します。そのため、融資の準備も並行して行う必要があります。

    もれのないように着実に準備を進めるためにも、物件の準備に関しては、クリニック開業に実績を持つ、専門知識や経験が豊富な不動産会社に依頼することをお勧めします。

  • 開業日の決定:カギとなるのは「診療科」「開業地」

    診療科によって、望ましい開業日は異なります。例えば、耳鼻科であれば花粉やアレルギー、もしくは風邪やインフルエンザなどが流行る前の時期だと需要が見込めます。

    ちなみに、診療科目により開業までに必要な段取りが異なります。例えば、もし小児科で予防接種を打てるようにしたい場合は、医師会に入会するための手続きが数ヶ月前に必要です。その点も考慮して準備を進めましょう。

    さらに、もし候補の開業地でよく流行る病気、必要とされる医療サービスがあれば、間に合うように開業するのがおすすめです。他にも、あまりにも暑かったり雪深かったりなどによりアクセスが悪くなる時期は避けるという方法もあります。

    以上の視点から、診療科や開業地ごとに来院が多く見込めそうなタイミングをある程度狙って開業日を選択すると良いでしょう。

  • 資金計画とスケジュール:開業のスムーズな進行

    資金調達は開業の6ヶ月前までには目処をたてておきます。開業にかかる金額の目安はおおよそ5,000万円から1億2,000万円です。診療科目や地域により差があります。

    資金調達先としては、信用金庫や地方銀行、日本政策金融公庫、独立行政法人福祉医療機構などがあります。

    信用金庫や地方銀行は、中小企業の味方です。いわゆるまちの銀行として、新規創業にも前向きな考えを持っているところも多いです。日本政策金融公庫は、新規創業であればより低金利で融資してくれる場合があります。

    独立行政法人福祉医療機構は国の政策と連携し、医療・福祉の充実を目的として活動する団体です。クリニック開業資金の融資も行っています。また、病床不足地域の建物改修費用なども積極的に融資しています。

    創業資金を低金利で融資してくれる金融機関は多いですが、もちろん、必ずしも融資してもらえるとは限りません。こちらの希望する金額や金利で審査が通るとは限りません。まずは上記の金融機関を候補に挙げて、自分にとってより良い条件で融資してくれるところを探してみましょう。

大幅なコストカット
クリニック・医院の承継開業

クリニックや医院の承継開業は、コストカットを大幅にできる有効な方法です。

アットクリニックでは、クリニック居抜き物件なども多く扱っています。豊富な実績をもとにより良い物件をご提案しますので、まずは気兼ねなくご相談ください。

また、後継者がいなく困っている事業承継物件の提案も可能です。主に、東京・神奈川中心に関東圏に対応していますが、その他エリアも相談可能です。

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  • クリニック開業物件を探す費用を削減するためには

    クリニック開業物件を探すためには、交通費などの費用がかかります。また、物件を取得した際には、敷金や保証金などの、まとまった費用がかかります。

    これらの費用を節約する方法の1つとしても、医院の承継開業はおすすめです。既存の内装でよければ、内装工事費もかかりません。

  • クリニック開業物件を探す時間を削減するためには

    クリニックの開業物件は、以前よりも探すことが困難になりました。クリニックの数は年々増加しており、人気のエリアや好立地の物件は既に抑えられているケースが多いためです。

    だからこそ、医院の継承開業を視野に入れれば、自分の条件に合った物件と出会えるチャンスが増えます。

    また、もし希望のエリアで既に開業していて、経営がある程度軌道に乗ったクリニックを承継するのであれば、物件を探す時間を削減できるという恩恵が得られるのです。

    自分の希望がある程度ある方も、そうでない方も、クリニックの承継開業も含めて物件を検討してみると良いでしょう。

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